■体系的レビューとメタ分析の結果、慢性腰痛は年齢・性別・体重・教育レベルの影響をまったく受けておらず、肉体労働・仕事の満足度・病欠などの影響も弱い。最も重要なリスクファクターは心理学的・機能的領域と考えられる諸因子(イエローフラッグ)。http://1.usa.gov/lr6fyx
■腰痛は米国で最も過剰診療が行なわれる疾患だが、それによって患者のアウトカムや有病率が改善したようには思われない。http://1.usa.gov/lrANBd http://abcn.ws/cBnU4o
■慢性腰痛患者を対象とした二重盲検プラセボ対照RCTの結果、巷で大人気のグルコサミン服用群に、プラセボ群を上回る統計学的に有意な利点は認められなかった。http://1.usa.gov/lNW0Zv
■88,000例以上を対象としたコホート研究により、筋骨格系疾患を持つ患者の死亡率と発がん率の高いことが判明。死亡率が高いのは股関節痛・腰痛・肩関節痛の順で、発がん率が高いのは腰痛・股関節痛・頚部痛の順だった。しかしその理由は不明。http://1.usa.gov/mnkHNZ
■腰痛の原因はいまだに謎だが、椎間板変性を腰痛の原因と考える脊椎外科医は23%のみで、その患者に固定術か椎間板置換術を選択すると答えた脊椎外科医はわずか1%。もし自分が患者なら99%が保存療法か放置すると回答。http://1.usa.gov/katDsM
■筋骨格系疾患で重要なのは「長期病欠は不利益」「患者は損傷に苦しんでいるのではなくイエローフラッグ、ブルーフラッグ、ブラックフラッグに苦しんでいる」「患者を助けるには資源や費用は不要」「職場復帰には医師のみならず職場の関与が必要」の4点。http://amzn.to/lU1o26
■拙著『腰痛ガイドブック』と拙訳『急性腰痛と危険因子ガイド』で紹介したように、イエローフラッグは臨床転帰不良や慢性疼痛、活動障害をもたらす患者自身の心理社会的問題。痛みを大惨事と捉える、重病だという思い込み、過度の心配、抑うつ、動作恐怖、将来の不安、受動的態度、効果のない治療など。
■ブルーフラッグは職場に関連した問題。肉体労働、満足度の低い仕事、職場の社会的支援不足、ストレスの多い仕事、労働環境や作業内容の変更が行なわれない、労使間のコミュニケーション不足など。
■ブラックフラッグは患者をとりまく社会的環境に関する問題。会社や医療関係者との意見の不一致、補償問題、各種手続きの遅延、恐怖心を煽るメディアに対する過剰反応、家族からの否定的反応、社会的孤立や社会的機能不全、役立たない職場復帰計画など。