●腰痛に患者教育と心理行動的アプローチ(認知行動療法)は有効か
・腰痛学級が腰痛発症を減少させるかは明かでない(グレードI)
・腰痛学級は早期職場復帰に向けた効果が期待できる(グレードC)
・小冊子などを用いた患者教育は、腰痛の自己管理に有用である(グレードA)
・認知行動療法は、亜急性または慢性腰痛の治療に有用である(グレードA)
以上の内容が要約としてまとめられていました。
心理的な側面からアプローチも含まれる、ある意味画期的な内容ではないかと思います。
エビデンスを元にまとめられたレポート類を読むのもいいとは思いますが、専門用語が多すぎるので
一般書籍で腰痛に関してまとめられている本もあるのでそれらの本で読書療法はオススメできます。
●腰痛に神経ブロック・注射療法は有効か
要約のみ
・硬膜外注射、局所注射の腰痛に対する効果について一定の結論は得られていない(グレードI)
・腰痛治療において、椎間関節注射および脊髄神経後枝内側枝ブロックは短期的および長期的疼痛軽減に有効である(グレードC)
・神経根性痛に対して、経椎弓間腰椎硬膜外注射と神経根ブロックは短期的効果がある(グレードB)
●腰痛に手術療法(脊椎固定術)は有効か
要約のみ
・重度の慢性腰痛をもつ患者に対して、脊椎固定術を行うことにより疼痛軽減および機能障害を減じる可能性がある(グレードB)
・腰痛治療において脊椎固定術と集中的リハビリテーションとには明確な差はない(グレードB)
徒手療法に関する有害事象を取り上げるなら、フェアに手術療法による有害事象も取り上げるべきでしょう。
投薬に関しても一緒ですね。
●腰痛に代替療法は有効か
このブログ内では、このClinical Questionが最も興味深く読み進めた部分となります。
まずは要約からなのですが、
日本ではカイロプラクターや整体師は公的な資格ではない。以下の推奨は海外の文献によるものである。
という前置きがあります。
・徒手療法は急性および慢性腰痛に対して他の保存的治療よりも効果があるとはいえない。(グレードB)
・マッサージは亜急性や慢性腰痛に対して他の保存的療法よりも効果があるとはいえない。(グレードI)
・鍼治療は慢性腰痛に対して他の保存的治療法よりも効果があるとはいえない。(グレードB)
1.徒手療法
大まかには長期的に他の保存療法と比べて有意性がないとの結論がでていますが、
限られた論文から部分的に抜き出すと
亜急性腰痛を含めたメタ解析では39の論文をもとに行われ、徒手療法は偽治療としてvisual analog scale(VAS)を用いた腰痛の評価では短期成績でのみ有効性を示した。
しかし、長期成績では有効性に差がなく、また運動療法、理学療法、薬物療法、腰痛学級などと比較して治療効果に差は認められなかった。
と記載されています。
たとえ短期的にとはいえ有効性を示されているという点は軽視できないと思います。
急性腰痛(ぎっくり腰)になった場合、非常に辛いのは初めの1週間ぐらいと思われますが、その期間での有効性が示されるというのは
活動の維持においても有効に作用しているのではないかと思われます。
慢性腰痛に関しては、運動療法、理学療法、一般的療法などとの比較では治療効果に差は認められなかったと記載されています。
徒手療法に関してはお決まりのようなことなのですが、有害事象に関しても記載されております
軽微なものでは局所不快感、疲労がみられる程度であるが、椎体骨折や椎間板ヘルニアなどによる麻痺発症など重篤な合併症も報告されている
徒手療法のみ有害事象を記載していますが、一般的な腰痛治療に関しての有害事象も併せて記載することがフェアな取り上げ方だとおもうのですがいかがでしょうか。
90年代にあったカイロプラクティックに関する三浦レポートよりは遥かにマシになっている印象はあります。
2.マッサージ
読み進めていくとマッサージと低出力赤外線レーザーを用いた偽治療と比較した質の高いRCTでは、短期成績は疼痛、機能ともにマッサージの改善効果が有意に優っている記載があり
理学療法・運動療法・リラクセーション・鍼・自己管理教育などと比較しても痛みと機能において、または痛みと機能のどちらかにおいてマッサージがより効果的であったと記載されていました。
慢性腰痛の治療にしては推奨できないとも記載されていました。
3.鍼治療
急性腰痛に対する鍼治療の試験は3件のみであり、確たる根拠の結論を示すことができないとした。
慢性腰痛に対する鍼治療の短期治療効果に関する22件のRCTをメタ解析した結果では、偽治療としての鍼と比べて正しい手技に従って鍼治療を行ったものでは治療効果が高いが、
脊椎マニピュレーション、マッサージ、TENSおよび薬物療法との比較では差を認めなかった。
かなり端折った内容となりましたが、だいたいのことはわかったのではないかなと思います。
総じて長期的な視点に立つとそれぞれの治療法に有意性がないとの結論が目立ちます。
●腰痛の治療評価法で有用なものは何か
要約のみ
◇健康関連QOL評価法は身体的、心理的および社会的角度から多面的要因を評価できる利点がある。
◇Roland-Morris disability questionnaire(RDQ)やOwestry disability index(ODI)などが有用な腰痛の評価法である
◇日本独自の評価法としてJapanese Orthopaedic Association back pain evaluation questionnaire(JOABPEQ)、Japan low back pain evaluation questionnaire(JLEQ)がある。
◇痛み自体を評価する方法としてvisual analog scale(VAS)がある