EBM
EBMの誕生
1991年、医学界にEBM(Evidence Based Medicine)という概念が登場しまし
た。これは、目の前にいる患者に、何かをした場合、他の方法と比べて、結果に
どんな差があるのかを把握したうえで、多様性のある個々の患者にとって最善の
医療を提供するための方法論です。日本では「根拠に基づく医療」と呼ばれてい
ます。
EBMの誤解
EBMという方法論が生まれたわけですが、患者さんの価値観や状況を軽視し、
最善のエビデンスのみを判断材料とする、根拠の押しつけがEBMであるとの
誤解が発生しました。(通称エビ固め)
現時点でもっとも信頼のおける
科学的根拠に基づく医療
(Guyatt GH, ACP J Club, 1991)
↓
個々の患者の診療方針を決定するにあたり
現時点で最良の科学的根拠を慎重に用いること
(Sackett DL. et al, BMJ, 1996)
EBMを構成する要素
EBMを構成する要素は4つあり
○最善のエビデンス ○患者の価値観
○患者の状況 ○医師の臨床技能
これらの要素を吟味して最善の医療を提供するのがEBMなのです。
最善のエビデンスは1/4の要素でしかありません。
料理に例えるとわかりやすいです。
・最善のエビデンス →食材(新鮮な物ほど良い、例:新鮮な魚介類や肉類など)
・患者の価値観 →お客様の好み(例:魚より肉の方が好み)
・患者の状況 →お客様の状況(例:魚介類にアレルギーがある)
・医師の臨床技能 →シェフの調理技術
この場合、「新鮮な魚介類ですよ!新鮮なので食べて下さい」とお客様の口
に魚介類をポンポン放り込んだらただのドクターハラスメントです。
お客様の価値観や状況によっては、食材の変更(この場合、新鮮な魚介類が
あっても肉料理に変更など)も必要になります。
最終的にはシェフの調理技術やさじ加減が重要になってきます。
EBMの実践
1.疑問点抽出
■病態生理はともかく臨床現場における生の疑問点を抽出
Patient :目の前にいる患者に対して
Intervention :どんな介入をすると
Comparison :ほかの方法と比べて
Outcome :結果にどんな差があるか
2.文献収集
■世界中の医学論文をもれなく検索
インターネットの整備により世界の論文を検索することが可能となり膨大な資料の収集が迅速に
行えるようになった
■毎年200万件超の論文発表
100件の論文のうち23件が2年以内にその結論が覆され、そのうち7件は発表された時点ですでに
結論が覆るということから常にアップデートが重要
3.批判的吟味
■エビデンスの質
■勧告の強さ
■推奨度のグレード
4.適用性判断
■エビデンス
■患者の価値観
■患者の状況
■臨床技能
参考文献
TMSジャパンメソッド バージョン2013
腰痛ガイドブック