画像検査の功罪
基本的にレッドフラッグの徴候が見られない場合での画像検査はリスクばかり高くなって
ベネフィットを感じることができないのではないかと思います。
画像検査は役に立たない
■672研究をレビューした結果、画像所見と腰痛との間に関連性はない
”(Boos N & Lander PH, Eur Spine J, 1996)
”
■X線撮影・CTスキャン・MRI・サーモグラフィーを含む画像検査は、臨床転
帰(疼痛・活動障害・不安)を改善させることはなく、医療費の高騰や手術件
数の増加を招き、X線撮影とCTは放射線被曝による発がんリスクが上昇する
ため、腰痛患者に画像検査を行うべからず
(Chou R. et al, Ann Intern Med, 2007)
■MRI所見と職業・腰痛との間に関連はなく、健常者の32%に異常所見が認め
られ、腰痛経験者の47%は正常所見
(Savage RA. et al, Eur Spine J, 1997)
■MRIとX線撮影の臨床転帰に差はなく、医師も患者もMRIを好むものの、付加
価値が少ないだけでなく、手術件数が増加して医療費の高騰を招く
(Jarvik JG. et al, JAMA, 2003)
■初めて腰痛を発症した患者に対する3ヶ月以内のMRI所見は、臨床的に重要な
構造異常である可能性はきわめて低い
(Carragee E. et al, Spine J, 2006)
■6研究をレビューした結果、重篤疾患のない急性・亜急性腰痛患者に画像診断
(X線撮影・CT・MRI)を行っても臨床転帰は改善しないため、腰痛患者
の画像検査はやめるべき
(Chou R. et al, Lancet, 2009)
画像検査による被曝
■腰部に対する4方向(前後・側面・斜位)のX線撮影による卵巣への被曝量は
装置によっては1回で6年~98年間、毎日胸部X線撮影をした被曝量に匹敵
(Hall FM. Radiology, 1980)
■腰部に対する2方向(前後・側面)のX線撮影は、1回で1年以上毎日胸部X線
撮影をした被曝量に匹敵
(Jarvik JG. Neuroimaging Clin N Am, 2003)
■2006年に米国民が被曝した放射線量は1980年代初頭の7倍に達したが、主な
原因はCTや核医学検査の増加によるもので、主な原因はCTや核医学検査の
増加によるもので、これらの画像検査による放射線被曝は医療被曝全体の75%
を占める
(NCRP, lionizing Radiation Exposure of the Population of the United States, 2008)
■1回の全身CTによる放射線被曝量は、広島・長崎の爆心地から3.2キロの地点
で被曝した生存者とほぼ同じで、がんによる死亡リスクが増加
(Brenner DJ & Hall EJ, N Engl J Med, 2007)
■広島と長崎の被爆者を50年以上追跡した結果、低線量の放射線被曝であっても
脳卒中と心疾患による死亡リスクが増加
(Shimizu Y. et al, BMJ, 2010)
■2007年の1年間にアメリカ国民が受けたCT検査によって、これから年間がん
発病者数の2%に相当する29,000人が発病すると推計
(Berrington de Gonzalrez A. et al, Arch Intern Med, 2009)
日本はCT保有台数がダントツに高いです。機器を導入した以上は検査をしてペイする必要がでてきます。
グリーンライトの場合でも多数X線診断が行われていることも推察できます。
うがった見方をすれば過剰な検査により放射線被曝量が増え、それに比例してがん患者が増えているとの考察ができます。
アメリカなどの民間の保険だと、X線による被爆の査定は相当厳しく行っていることが推察できます。クライアントに不必要な放射線被曝をさせると後々のがん発症率を高めてしまいます。もしガイドラインのグリーンライトにあたる患者さんにX線診断を行った場合、検査を実施したドクターには保険会社からそれ相当のペナルティがあるのではないかと推察できます。
参考文献
TMSジャパンメソッド バージョン2013