手術について
手術について
■2年間にわたるコホート研究によると、坐骨神経痛を有する椎間板ヘルニアの手
術は疼痛・復職率・活動障害において保存療法より有益とはいえず、坐骨神経痛
は手術の有無に関わらず時間が経てば改善する
(Atlas SJ. et al, Spine, 2010)
■坐骨神経痛に対する椎間板手術は、保存療法よりある程度の優位性を示すものの
一過性でしかなく、ノルウェーのRCTでは1~4年間優位性が持続したがオランダ
のRCTでは1年未満
(Weber H, Spine, 1983)
(Peul WC. et al, N Engl J Med, 2007)
■非特異的腰痛に対する手術成績は、単独の保存療法よりわずかに優れているが、
集学的リハビリテーションとほぼ同じであり、全例完治するわけではない
(Chou R. et al, Spine, 2009)
■椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に対する手術の短期成績は、保存療法よりわずか
に優れているが、その差は時間の経過と共に減少してゆく傾向にあり、長期成績
は保存療法と変わらない
(Chou R. et al, Spine, 2009)
■脊柱管狭窄症で手術を受けた88名を約10年間追跡した結果、75%が満足して
いたものの、23%が再手術を受け、33%が重度の腰痛を訴え、53%が2ブロ
ックの距離も歩けない
(Katz JN. et al, Spine, 1996)
■メーン州の3つの地域で椎間板ヘルニアか脊柱管狭窄症で手術を受けた665名を
2~4年間追跡した結果、手術実施率の高い地域は低い地域より治療成績が劣る
(Keller RB. et al, J Bone Joint Surg Am, 1999)
■腰痛疾患は基本的に手術の対象ではなく、適切な管理で99%の患者が手術を避
けられることから、脊椎外科医は手術を一時的に凍結すべき
(Rosomoff HL & Rosomoff RS, Med Clin North Am, 1999)
■手術はガイドラインに従った保存療法を2年間行っても効果がないか、激しい痛
みが続く患者に限るべき
(European COST, 2004)
脊椎固定術の治療成績
■椎間板ヘルニアや椎間板変性に対する治療成績は、集学的リハビリテーション
(認知行動療法+運動療法)と同等
(Brox JI. et al, Spine, 2003)
(Fairbank J. et al, BMJ, 2005)
(Brox JI. et al, Pain, 2006)
■脊柱管狭窄症に対する固定術は5年間で15倍に増加したが、低侵襲性の除圧術に
比べると、再入院率・重大な合併症リスク・死亡率・医療費(3倍以上)が高い
(Deyo RA. et al, JAMA, 2010)
最初の手術が最後のチャンス
■手術を受けた患者の5~50%は、症状がまったく変わらないか、もしくはさらに
悪化する脊椎手術後不全症候群(FBSS)に陥る
(Bogduk N, Med J Aust, 2004)
■再手術の改善率は45%(20%は悪化)、3回目では25%(25%は悪化)、4回目
では15%(45%は悪化)まで落ち込む
(Waddell G. et al, J Bone Joint Surg Am, 1979)